そして線を大切に。

九谷焼絵付師です。主に下絵付けを中心に制作しています。上品で味わい深い下絵の世界を目指して…

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手びねり

あけましておめでとうございます。一月も後半戦ですが、皆さまお元気でしたでしょうか。

Instagramの投稿を作っているときに熱量が上がってきてしまいましたので、吐き出しの場として使っているここに久しぶりに書いていこうと思います。

 

記事の題名「手びねり」にしました。

手びねりのことがしゃべりたくて、わたしが最近やっている手びねりについてお話させてください。

 

手びねりとは陶芸の成形方法の一つで、粘土があれば誰でもできる成形方法です。小難しい道具は要りません。

紐作り、玉作りが基本です。

わたしは自分自身お酒が好きなのと、小さく形を作れるので初心者でも取組みやすい、盃を作ることから始めました。

作り方としては、途中失敗して破壊してしまうことを前提としているため、幾つかまとめて粘土玉を作ります。

大体同じ重さにした粘土を、手の中で自由に形づけていくのですが、形が出来てくる中で次はこうしようかなこんなのはどうかなと楽しみながら制作しています。

次に削りやすい粘土の固さになるまで、新聞紙やビニール袋を被せて数日放置します。

良い固さになったら一つずつ荒削りをしていきます。そしてまた被せ物をして優しく水分を抜いていきます。

本削りとヤスリかけは特に時間をかけています。本削りで形を決定して、ヤスリで丁寧に形の精度を上げていきます。わたしは2種類使っていますが、細かい目の紙ヤスリは完全に水分が抜けて粘土が真っ白になった状態の時に使います。

最後は粉まみれを拭うために、濡れたスポンジで撫でたら完成です。(この後、素焼と本焼です。上絵付する時はもう一度窯に入れて焼きます。)

毎回不安もありますが、自分の好きにしていい感覚はすごく幸せだなと感じています。誰かに咎められる訳でもないし、同じ形を求めなくてもいい。本当に私だけに決定権がある世界。ノンストレス。

普段はしない粘土仕事なので、子どもに戻った気持ちにもなれます。

わたしの最近の手びねり遍歴は、ブレンド陶土の黒土から始まり、信楽粘土を二度、そして九谷の透光性粘土です。

なぜ、九谷粘土を避けていたかと言うと素人には成形が難しいと教えてもらったからです。黒土や信楽粘土のような陶土ではなく、九谷は磁土になるため成分が異なります。粘り気が少なく、無理が効かず歪みやすいと言われています。

本当はすぐにでも地元の粘土で作りたかったのですが、とにかく形にしたい気持ちが強かったので、しばらく手慣らしになればと思い陶土を使わせてもらっていました。

九谷の透光性磁土に変えてからは、土台が白くなるのでようやくやりたかった染付(下絵付)が出来るようになり、絵付の幅が広がりました。陶土は不純物が多いのかまだらだったり、灰色やクリーム色だったりして上絵付向きだなと思ったからです。

あまり数は作れませんが、努力と根性の塊のわたしですので、まだ絵付待ちの在庫がたくさんあります。

どこかで見つけた時は、是非手に取ってご覧いただければ嬉しいです。

ここ最近は絵付仕事ばかりで、粘土に触れていませんが、次に作ってみたいと心に秘めたアイテムも見つかっています。まだまだ発表は先になりそうですが、ゆっくりわたしのペースで作っていけたらと思います。