そして線を大切に。

九谷焼絵付師です。主に下絵付けを中心に制作しています。上品で味わい深い下絵の世界を目指して…

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器一つを仕上げるまで、一体どのくらいの時間がかかるのか、について。

こんにちは。

今日は、器が一つ仕上がるまで、どのくらいの時間がかかるのかをお話しようと思います。

私が知っている範囲と、私個人の話しか出来ませんので、ざっくりとした内容かもしれませんが、大体の目安にはなるかなと思います。

 

それでは、本日もお付き合い下さる方は、どうぞこのままご覧下さい。

 

 

 

 

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ずばり先に答えを言ってしまえば、

注文を受けてから、納期は早くて一ヶ月は掛かると言われています。

むしろ、一ヶ月で手元に届いたならば、かなり優秀と言ってもおかしくありません。

 

器が仕上がるまで、どの工程があるかと考えれば、そのぐらいは見てないと仕上がらないことはご理解頂けると思うのですが、なかなか一般的に見て浸透していないのが現状ではあります。

 

私のように、ほとんど生地は作らず、生地屋さんに頼っている場合、

生地の在庫が無い限り、一ヶ月で仕上げようと思うのは、かなり無理をしなければ難しいです。

かなり無理を…というのは、自分自身の問題だけでは無く、他の問題がある為です。

九谷焼は絵付けあってこその世界ですから、土台となる生地が無いことには始まりません。

生地師はお抱えでは無く、色んな作家さんとの付き合いがあるのが普通ですから、いついつまでに自分では欲しいと思っていても、先に注文している作家さんを蹴ってまで優先的に作ってもらうのは、それこそ至難の技です。

しかも、窯焚きも毎日あるはずがなく、素焼も本焼きもひと月にそれぞれ一回という所もざらにあります。

もう、それだけで制限がかかってくるのです。

すごく急ぎで本焼き窯や上絵窯に、物だけ持って行ってお願いすれば焼いてもらえるという裏技もあるにはありますが、緊急でない限り私は利用したくありません。

何故なら、生地師は自分が受けた注文は、”最後の焼き上げまで遂行するものだ” とし、責任を持った仕事をしているからです。腕に惚れて注文をした、尊敬する生地師に仕上げてもらうのが一番良いですから、何よりもまずはそこの周期に任せています。

ですから、絵付けがどんなに素早く出来るのだとしても、手持ちの生地が無い限り、最短では仕上がらないということを考えて、作り手も納期を提示しなければならないのです。

反対に、自ら生地も手掛ける作家さんの場合は、もっと柔軟で早い対応が出来るのかなと思います。しかし、ある程度生地が溜まらないと窯も焚けない為、こちらも予測が難しいことはあるかもしれません。

焼物というのは、一度手を離れ、窯で焼くという工程が入る為、絵付けを生業にしている作家としては、中々読めないのが正直なところです。

はっきりとした確固たるものが存在せず、作っている本人すら分からず、、

でも、とにかく

”納期があるなら必ず守る”

これだけは誠意を持って皆さん対応に当たられていることと思います。

 

私はまだそれほど注文を受けた事はありませんが、期間を頂けるなら二、三ヶ月余裕を持ってゆったりとした仕事をしたいと思っています。

焦った仕事で変なものを送り出すより、納得する良いものを、お客様に届けたいと思うからです。

綺麗事なのかもしれませんが、そう思うし、それに賛同して頂ける方に求められたいと願ってしまうのです。