そして線を大切に。

九谷焼絵付師です。主に下絵付けを中心に制作しています。上品で味わい深い下絵の世界を目指して…

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生地関連の話が続いていますが、今日もそんなお話です。

生地屋さんの生地って、しっかりしている分(良質な為)、値段もそれなりにします。

この間も、似たような話をしていましたが、少し違う角度から話そうと思っています。

 

生地屋さんは専門分野に分けて成形していることはお話していますが、これの説明を付けつつ生地の値段のことにも触れたいと思います。

 

〜ロクロ成形〜

回して作るものならなんでも作れます。

サイズや手間のかかり具合で値段が変わりますが、私がよく利用する職人さんの所は安くても一つ千円前後からします。展覧会の作品用にもなると三〜六万くらいまでかかります。

〜タタラ成形〜

板状にした粘土で、ロクロでは出来ない形が作れます。

あまり利用しないので正確には言えませんが、こちらも千円前後から買えると思います。小さなものは分かりませんが、ロクロ成形と似たようなものか少し安いくらいの価格帯で手に入るかと思います。

〜鋳込み成形〜

泥漿(でいしょう)と呼ばれる、ドロドロの粘土を石膏(せっこう)で出来た型に流し、成形します。型を合わせ、圧縮しながら取ると聞いています。

型を使用することで、同じ形が時間をかけず成形することが出来る為、この中でも一番値段も安く求めやすいです。数百円から手に入ります。

〜型物成形〜

人物や動物などの複雑な形を、石膏の割型を用いて成形します。

どうしても置物のイメージがある為、利用したことが一度もありませんが、型があれば粘土と泥漿どちらでも取ることが出来ると聞いています。こちらも型を使っている為、それほど値は張らないそうですが、型そのものを作って欲しいという依頼も出来るようで、こちらになるとひと型30万からするとかなんとか聞いています。

 

利用しないところの知識が無さ過ぎて、いつもの如く、ふわっとした情報ですみません。。

 

ちなみに、

手挽き(てびき)の生地とも呼ばれる、ロクロ成形のものですが、ロクロ師さんは個人作家の方との繋がりが濃い為、量産の鋳込みで出来た”手挽きじゃない生地”を下に見ていたりします。

”手挽きじゃない生地”を使用するのは、ものが大量に欲しい業者の仕事だと思っているようです。

 

鋳込み生地は、一見してロクロ成形かのような生地も作れますが、安く手に入れられる分、価値が低いと言われています。

 

でも、最近私の中で、鋳込み成形だからと言って価値が低いとは、一概に言えないのでは無いかと思い始めました。

鋳込みの良さは何度も同じ生地が取れることと、薄く均一な生地が取れる為、軽量に仕上げることが出来ます。 個人作家がオリジナルの型を作って、あえて鋳込み成形をする場合、この選択は価値が低いとは絶対に言わないと思います。

ようは、
そこに込める魂があれば、成形方法は何であれ、

「生地自体にも命が吹き込まれる。」

とも言えるのでは無いかと思うのです。

 

あ、だから生地はそれなりの値段するのか。笑

 

 

最後は鋳込み生地の話が長かったですね。大抵の一般の人は知らない成形方法ではないでしょうか。

あなたのお手持ちの器がどんな風に作られているのか、そんなこと考えたこともないかもしれません。

でも自分で話しときながら何ですが、そんなことどうでもいい情報なんですよね。あなたにとって最高の器であれば、出来て来る工程なんて、その魅力を底上げする程の凄みは無いのですから。

一番は既に目の前の結果として出ているのですから。

ただ、底上げはしなくとも「へぇー。そうなんだ〜。」と頭の片隅で思って頂けたら、深い興味を持つきっかけになるかもしれないのではないかと思います。

 

なんとなく好きだと思って手に入れた器。

大切にして欲しいです。

 

 

それでは、また。