そして線を大切に。

九谷焼絵付師です。主に下絵付けを中心に制作しています。上品で味わい深い下絵の世界を目指して…

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下書きに使う道具のはなし。

私は下書きに鉛筆を使っています。

デッサンには、2B〜6Bなどの軟らかいものも使いますが、陶芸に使う鉛筆は普通によく出回っているHBで十分だと思っています。

軟らか過ぎず、硬過ぎず丁度使いやすいのです。

あんまり濃いと、釉薬が弾くと言われていて、弱い力で軽く下書きするのが良いそうです。もし初めからやり直す時は、ティッシュを消しゴム代わりにしてこすると、鉛筆の線が落とせます。

これも、ザラザラの素焼生地ならではの為せる業だと思います。

本焼生地だと、こうは行きません。

釉薬を掛け焼き上げられたツルツル状態ですから、鉛筆の線は載りません。にかわ液(油分を拭き取り、上絵付けをし易くする)で拭き上げた後ならば黒鉛が引っかかるので多少載りますが、無理に使わなくても別の方法で下書きをすることが出来ます。

それは、墨描きです。墨は、陶芸用のカイロ灰(桐灰)を使う方も中にはいらっしゃるかもしれませんが、私は手軽さが持ち味の墨汁を使用しています。これに大量の水を入れ、極薄くしてから筆で描いていきます。

 

しかし、型紙がある場合は別で、今度は必ずカイロ灰を使います。これは粉末の素材な為、初めて使う時は少し面倒ですが、一度作ると使いたい時使いたい分だけ使える、便利な墨になります。

カイロ灰に水と少量のフノリ液(海藻原料の繊維を板状にしたフノリをお湯で溶かしたもの)をつなぎに入れて角乳棒を用い、ガラス板上でよく擦ります。

液体になりますが、乾くと元のように粉末化する為、この特徴を生かし型紙の墨打ちにもってこいなのです。

一度で、3、4回は写せるので、数をこなす為には必要不可欠なものです。

 

型紙は素焼、本焼問わず同じものを使えるので、写すための薄い紙とカイロ灰は絵付けする人であれば、誰でも持っている材料かと思います。

 

その薄い紙ですが、簡易的などこでも手に入るトレーシングペーパーもありますが、少しゴワゴワするので、私は竹紙(ちくし)と呼ばれる極薄いものをよく使っています。

陶房に居た頃に教わったのですが、これは竹の繊維で出来ていて、和紙よりも強くて破れにくい素材だそうです。

やわらかく、扱い易いので今でも好きで使っています。

 

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まとめると、下書きの際に使う道具は、

・鉛筆

・墨(墨汁/カイロ灰)

・筆

・薄い紙(竹紙/トレーシングペーパー)

です。

あとは、型紙を生地に載せて写しとる時には、適度に擦らなければならないのですが、指で静かに擦るよりも、表面がツルツルしたものが好まれます。

昔ながらのやり方だと、椿の葉っぱ(葉っぱって年がら年中あるのでしょうか?)が良いと言われていますが、私としては中々気軽に手に入るものでは無いので、何か手短にあるフィルム系のもので代用しています。

それは、タバコの透明のカバーや、お菓子の袋とか何でも良いようです。一度作れば、無くすまでずっと使い続けます。(小さく透明なので、何処かに行ってしまう事があります(~_~;))

 

 

 

最後に、

下書きには、手描きと型紙を使う二種類があります。どちらも、場合に合わせて選択しています。

型紙を使ったからといって、価値が下がる訳では決してありません。

 

あくまで、下書きは下書きです。

 

その後の、のびのびとした線を引く為の補助役を担っているのみです。

 

描く未来(絵付完成図)を予測することは、制作する上での道しるべになっていると、私は信じています。

何故なら、予測出来ない不安な状態で描くことは、自分が納得する良い作品を生み出せないと思うからです。

 

せっかく素焼(本焼)まで辿り着いた、

素晴らしい生地に描いていくのですから、

 

私は大切に扱いたいのです。

 

 

長くなりましたね。

それでは、また。