そして線を大切に。

九谷焼絵付師です。主に下絵付けを中心に制作しています。上品で味わい深い下絵の世界を目指して…

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そろそろまた、有田のお話をしても良いですか。

こんにちは、シタエッティです。

 

先日の話の続編となります。

有田焼に従事している御二方を講師として迎えた講演会に出席し、その後のディスカッションや懇親会に参加したお話を、前にこちらでまとめていました。

しかし、細かいところで伝えきれなかった部分があった為、また今回、記事に起こしていきたいと思っています。

 

他産地のことではありますが、私にとっては興味深い吸収が沢山あり、まとめないことには気が済まず…頭の片隅に置いてある、記憶の引き出しをひっぱりだしながら書いていこうと思います。

 

それでは、どうぞ。

 

 

 

 

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まず前回の話に、

”有田で伝統工芸士の資格を取得することは、難易度が高い試験をクリアしなければならない。”

と書いていましたが、詳しく話を伺ってみると、毎年、5、6人受験するそうなのですが、そのうち1人か2人しか受からないというお話でした。

しかも、10年受け続けても受からない人もいると言います。

 

一体どんな試験内容なのかと気になり聞いてみると、筆記試験と実技試験が1日の日程に組み込まれ、長時間に渡り試験官が常に監視する環境で行われているのだそうです。

筆記試験は全国統一のものと聞いていますので、そこでつまずくことはあまり無いのでしょうが、問題は実技試験です。

6時間半(と言っていた気がします…。)の時間制限があり、その時間内にテーマに沿った題で一つのものを仕上げなければならないのだそうです。

事前にテーマは知らされているようですが、下書きから始まり、ロクロ線、線描き、最後のダミで仕上げるまで、全工程を試験されるようです。(上絵付けのみの場合は、下書き、骨描き、色塗り。)

有田焼の特徴として、窯元では一貫した制作をするものの、分業制の為、絵付け全てを一人で行なうことはまず無いと言います。

ではどうするかと言うと、仕事の時間外に普段はやらない分野の練習を、積み重ねる等の地道な努力をし、この大切な日を迎えるようです。

それぐらい、この試験内容は過酷なのだとおっしゃっていました。

ですから、やはり伝統工芸士という称号は、国が認める言わば国家資格であり、(おそらく超難関の有田焼では特に)持っているだけでステイタスになるのだと思いました。

 

 

 

話は変わりますが、有田では、春と秋にイベントがあるみたいですね。

懇親会の時に詳しくお話を聞いてきたのですが、春はゴールデンウィークあたりに”有田陶器市”、秋は11月に”有田陶磁器まつり”となっているようです。

今調べると春の方は約100万人が訪れると書いてありましたが、私が直接その時聞いた限りでは、約200万人とおっしゃっていた記憶があります。

どちらにせよ、大きなイベントであることには変わりはありませんね。

しかし、もっとも驚いたことは、商店街は全て(いつもは飲食店だったりする場所も、臨時で)焼物の販売店に切り替わるようです。

そして、人がわんさか来る故に駐車場問題があるらしく、九谷では考えられない画期的(?)な解消法があることを知りました。それは、近くの民家が自宅の敷地を駐車場として開放しているようなのです。しかも、ワンコイン(500円)と聞きました。

規模にも驚きですが、町全体が総力を挙げてイベントを盛り上げていく姿が見え、話を聞いているだけで圧倒されました。

 

一方、

秋の”有田陶磁器まつり”では、普段は入れない窯元や商社の仕事場を開放していたり、有田の町を散策しながら焼物を楽しめるのが特徴のようです。

お話を伺った講師の方は、女性の伝統工芸士だったのですが、「私のオススメは秋。是非来てみて下さい。」とおっしゃっていました。確かに、有田の町を歩きながら、ゆっくり自分のペースで楽しめる魅力がありそうです。

周りにいた九谷の作家さん達も、しきりに「行きた〜い!」と盛り上がっていました。

 

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まとめると、

有田は、さすが日本の窯業産業の先進地であることに間違いは無いし、規模も凄いし、とにかく力のある産地だと思いました。

 

そして、色々な考えに触れて、凝り固まった私の視野を少し広げることが出来ました。

出会いは成長なのかもしれません。

 

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思い切り自己満足に浸ったまとめになっていましたが、頭の中を出せてスッキリしています。

長くお付き合い頂きありがとうございます。

 

それでは、

また。