まだまだ世の中には、自分の知らない世界が山ほどあります。
おそらく自分のレーダーに反応しないので、本能的に避けているのかもしれません。
昨日の搬出作業が終わってからのお話になります。
時間の余裕があったのと近くにあり行けそうだったので、前々から気になっていたギャラリーさんに足を運んでみました。
お店に入ると既にお客さん(のちに知り合いの方と知る。)がいて、店主と思われる方が少し声をかけて下さったぐらいで、あとはほとんど自由に見させていただきました。
半分以上見たところで、店主の方が「奥でも展示しておりますのでどうぞ。」とおっしゃるのでついて行くと、そこには自分が避けて来たような世界が広がっていました。
アウトサイダーアート
皆さんはご存知でしょうか。
美術教育を受けていない者が、自分の自己表現の場としてアートを選択し制作したものだそうです。
主に障害を持った方が多いそうです。
私は全く知らない世界でした。
名前すら聞いたことありませんでした。
でも作品だけ見ると、一見普通のオシャレなデザイン画のようにも見えます。
伝統を愛する私にとっては、前衛的過ぎて理解出来ない世界だと思い、こういったものは本能で避けて来たのだと思います。
衝撃でした。
言葉で表現するのは難しいですが、やってはいけないことをやってもいいんだと見せつけられている気分になりました。
作家さんは不在でしたが、店主の方が詳しくお話をして下さいました。
個展会場は作家さん自らセッティングしたようで、まるで彼がここで生活しているかのような、アトリエの中にいる感覚になりました。
会場の一角には、デスクがあり、ここで来場客とお話をしてインスピレーションで作品も作ってもらえるようです。内面を引き出して、作家さん曰くお客さんとの共作をするのだそうです。ただし、カウンセリングに沢山時間を割くので消耗するらしく、1日3人を限度としているようでした。
基本は、女の子のイラストを主体として、周りを自分の血と体液で汚して作品にしています。茶色く変色した血と、使用したカッターが張り付けられた作品では、生々し過ぎて怖いとおっしゃる方もいるようです。
20年程前から制作していて、自分がおかしくならないように(正常を保つ為に)絵を描き始めたようです。スケッチブックにアナログで描いていたものから、最近では写真も使ったり、パソコンで加工もしていくようです。
なぜパソコンのデジタルを使うかというと、とにかく加工の速度が速いということ。それは、自分の意思とは違う無意識から来る、意図しなかった偶然性が現れることに喜びを感じているようです。
作品を作り上げて行く経過が大切で、完成された作品は、彼に言わせれば、もはや”死体”なのだそうです。
時にはアナログとデジタルを行ったり来たりしながら制作していくそうで、その類のものを実際に見せてもらうと、とても複雑な作品に見えました。
また、個展と言いながらも、もう一人の作家さんの作品も展示されていて(コラボ作品もあったはずです)、この会期が終わったら台湾で二人展をする予定だとおしゃっていました。
とにかく、店主の方は終始興奮気味で、ものすごい熱意を感じました。アートをこよなく愛しているのが伝わって来ました。
「初めて会う時は怖かったけど、会ってみるととても知的で穏やかな人なんです!是非本人に会って話してみて欲しい!僕が言うより伝わると思うから!」というようなことを何度かおっしゃっていました。
私は正直もうお腹いっぱいだったので、作家さんがちょうどあと30分もあれば来られると知りながら、見残してきたお店の方に戻らせてもらいました。店主の方は、他の人気の作家さんを色々教えて下さいました。
もう出ようとした時、誰かが入って来ましたが、すぐに誰か分かりました。熱い説明を受けているときに店主の方がスマホで画像を見せてくれたのですが、そのまんまの本人でした。
私が思わず「こんにちは」 と会釈したら、目が合いました。
よく見透かされると言いますが、そんな気分になりました。一瞬の出来事なのに、目を見てるだけじゃ無い、遠くにあるわたしの心理まで見られている感覚でした。
色々思うことがありながらも、店を後にしました。次来るときは、ちゃんと身分を名乗れたらいいなとも思いました。
今まで自分の中に入って来なかった現代アートをこんなにも間近で体感させられて、とにかく混乱しました。
作品を見てどう受け止めたら良いのかも分からず、頭が真っ白で、無知な自分が恥ずかしくなりました。
湧き出てくる自己表現を臆する事なく、ただただ制作し続ける彼らにとっては”普通”のことが、私には恐怖だったのかもしれません。
この知らない世界は、出会いもタイミングも必然であり必要だったのでしょうか。
現段階のわたしには分かりません。
いつか分かる時が来るのかな。
あまり深く考えずにゆったり過ごそうと思います。
そしたらきっと
何かに気づくかもしれないから。