そして線を大切に。

九谷焼絵付師です。主に下絵付けを中心に制作しています。上品で味わい深い下絵の世界を目指して…

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無題でも良いでしょうか。

今日は、下絵付けと上絵付けの違いに、私なりの解釈を交えながら、今の自分の想いについて書いていこうと思います。

 

 

 

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そもそも下絵付けと言うのは、ガラス質に変わる釉薬を絵の上からコーティングして高温で焼き上げる為、そう呼ばれているのですが、その高温って一体どのくらいかご存知でしょうか。

 

 

 

実は、本焼の工程にあたるため焼成温度は1300℃前後と言われています。

 

下絵付けは、ここまでで終わりです。

 

 

これが上絵付けになると、さらにこの本焼された生地に絵付けをし、(絵具の成分で誤差はありますが)大体約800℃前後で焼き付けます。

 

 

この焼成温度の違いで、使える色の幅があるようです。決められた温度間で焼成しないと、絵具の成分により、燃え尽きてしまったり、また逆に溶けきらなかったりしてしまいます。当然といえばそうなのですが、綺麗に発色させようとすると、色には制限が出てくるのです。

 

よって、低い温度で焼く上絵付けでは可能な、多種多彩で鮮やかな色味が、高い温度で仕上げる下絵付けでは、上記に述べた理由により存在出来ないのです。もちろん、色味が全くないと言っているわけではありません。染付の藍色をはじめ、赤・黄・緑・紫など、色彩はちゃんと揃っています。しかし、釉の下という一膜覆われた所で発色しますので、比べても仕方のないことですが、どうしても華やかさに欠けているように感じてしまうのです。

 

 

染付、釉裏紅、辰砂、鉄絵

この四つが代表的な下絵付けの技法と言われています。どれも上絵付けのように派手ではないけれど、しっかりと芯を持ちそれぞれの魅力を発揮しています。そして、限られた色しかのせていない為か、どこか味わい深い印象を受けるのは私だけでしょうか。

 

 

 

 

 

先人たちが残してきた技術が、今もなお続いているのが納得出来ます。

 

 

 

 

 

 

 

しかし、絵付けに携われば携わるほど、もっと面白いものがあるかも知れないと、興味をそそられるのもまた事実です。そして、私なりの色に出会えることが出来たらと、夢を抱き、心魅かれてしまうのです。

 

 

 

 

人が人生のうちで、心魅かれたり琴線に触れるような出来事自体、そうそうないとすれば、私が今抱いているこの想いを大切にしたいと思うのです。

 

そうすれば、そこに向かうまでの悩みや苦しみももしかしたら、いつかは全てが感謝の気持ちになるのではないかと、自分勝手に捉えた考えをしてしまうのです。